このたびの平成30年 7月豪雨、9月台風並びに北海道大地震により、亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
『石州モノは、凍てに強く、水を通さない。』『とにかく固くて丈夫な瓦』瓦職人の間で、昔から語り継がれてきた言葉です。
石州瓦 島根県江津市「来待(きまち)色」とも呼ばれる赤瓦
イタリア・ローマにて「イエス・キリスト誕生」を再現。当時の瓦に注目⁉
岡山県岡山市 吉備津神社 回廊
石州瓦
起源は、古代中国 今から2500年前の春秋戦国時代
現在判っている瓦の起源は、春秋戦国時代の古代中国にまで遡ります。時の思想家、墨子の書物に、瓦葺きの家を示す「瓦屋」という文字が記されており、およそ2500年前という長い歴史を持つことになるわけです。
「瓦(グワ)」という中国語は“粘土を焼いたもの”の総称。かまどの周囲の土が燃焼して固く強くなっていることを発見した古代中国の人々は、住居の壁や床といった強度を必要とする部分に粘土を塗り、直接火で焼き固めていました。やがてこれが瓦という建築材料へ進化していったのでしょう。
呪術的な装飾として発展した瓦
中国における瓦の歴史の中で特筆すべきは、風水害から住居を守り保護する機能面だけでなく、呪術的な意味合いを込めた装飾性を持っていたことです。
古代中国の遺跡から出土している瓦には、樹木や鳥獣を配したものや、青龍、朱雀、玄武、白虎といった東西南北を守護する聖獣を紋刻したもの、「長生無極」「千秋万歳」などめでたい文字を刻印したものが多く見受けられます。
瓦は飛鳥時代、仏教とともに伝来しましたが、この時呪術的装飾性も同時に移入されます。いわゆる鬼瓦です。それは鯱(しゃち)、帆立、立浪、大国様、鳩など実に多彩で、日本的デザインに昇華されたものになりました。
シルクロードを伝わって生れた釉薬瓦
中国も漢の時代になると、ペルシャ湾からシルクロードを経て釉薬技術が伝わります。釉薬によって瓦や土器の強度や耐蝕性が飛躍的に高まることになります。隋や唐の時代になると、さらに耐久性の高い釉薬が製造されるようになります。この時代日本は飛鳥時代、ようやく瓦が伝来した頃です。
ちなみにヨーロッパでは、約2000年前の古代ローマ時代につくられた瓦が発見されています。古代ギリシャやアテネ文明の最盛期に建てられたパルテノン神殿からは、大理石の瓦が発見されています。紀元前のヨーロッパ古典建築においても、瓦という建築材料は、すでに一般化していたようです。
瓦の伝来 今から1,400年前の話
日本書紀に曰く・・・
『崇俊天皇元年(588年)、百済国より瓦工四人渡来す・・・。瓦窯作工、生瓦作工、瓦焼き作工、瓦葺き工四名の瓦博士である・・・。』 遣隋使などによって中国大陸から日本への文化移入が盛んになった6世紀頃、仏教とともに、さまざまな文化・技術が朝鮮半島を経由して渡来してきました。
588年に日本初の寺院飛鳥寺(現、元興寺)建設
飛鳥寺(現、元興寺)の屋根瓦
唐招提寺(左)、新薬師寺(右)
四名の瓦工は、日本ではじめての仏舎利建設のため、木工や画工といった多くの技術者たちとともに渡来したのです。
こうして588年に日本初の寺院588年に日本初の寺院飛鳥寺(現、元興寺)が建設されるのですが、その屋根はもちろん瓦でなくてはなりませんでした。
さらに607年には国内の瓦工による国産瓦で葺いた法隆寺が完成、以降は日本独自の瓦文化がスタートしていきます。
法隆寺東院夢殿
聖徳太子を追慕して創立された法隆寺東院の中心建物で、著名な救世観音を本尊とし、あわせて東院の創立と再興とに尽力した行信・道詮の像を安置してあります。この地は太子の住居であった斑鳩宮の跡地と伝えられていましたが、昭和九年以降の修理工事にともなう発掘調査で、当時の掘立柱建物数棟を発見し、そのことが確認されました。また、この調査では東院創立当初の回廊や南門の規模も判明した その創立を天平一一年(七三九)とする『法隆寺東院縁起』には多少の疑問ももたれるますが、天平宝字五年(七六一)の『法隆寺東院資財帳』には夢殿以下各堂宇の記録があるから、少なくともそれ以前の建立であることはまちがいありません。
堂は八角形の平面をもち、一般に八角円堂と呼ばれています。建立以来何回かの修理をうけてきましたが、なかでも寛喜二年(一二三〇)の修理は大改造をともなったもので、今見る姿はほぼこの時に定まったものです。改造の主な点は、組物を一段分積み重ね、軒部材を新材にとりかえて軒の出を増し屋根勾配を強くしたなどで建立当初と比べると建物の建ちが高くなり、全体に鎌倉時代らしい武骨さが強まったといえます。
このように中世の改造はあるものの、当初形態の復原も可能で、栄山寺八角堂とともに奈良時代の円堂を今に見ることができるのは幸いです。なお、頂上の露盤宝珠は宝瓶に八角形に宝蓋や華麗な光明をともなったもので、世上著名な優作であります。
【引用文献】
『国宝大辞典(五)建造物』(講談社 一九八五)
余滴
本号より~赤瓦で演出される石州瓦のふるさと~
粘土瓦の日本三大産地の一つ石州瓦をシリーズにてご紹介します。
ただし、速報が入った時は優先しますのでご了承ください!
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使
協力(順不同・敬称略)
石州瓦工業組合 〒695-0016 島根県江津市嘉久志町イ405 TEL 0855-52-5605
吉備津神社 〒701-1341 岡山県岡山市北区吉備津931電話: 086-287-4111
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